家事をキーパーに任せてイタリア映画とワインで休日を Cinema Italiano
イタリア式離婚狂想曲 / Divorzio all'italiana
1950年代シチリア。離婚が認められない当時のイタリアで、妻と別れ、若く美しい従妹と結婚しようと企む男を描いたコメディ。
シチリアの貴族、フェルディナンドは結婚して12年になる妻・ロザリアに飽き飽きしていた。その一方、若く美しい従妹・アンジェラに夢中で、アンジェラも彼のことを思っているようだった。ところが、カトリック教国のイタリアでは離婚が認められていない。なんとかアンジェラと一緒になる方法はないかと考え、ある法律を思い出す。それは、配偶者、娘、姉、妹の不貞が理由で、相手を殺害した場合、3年から7年の禁固刑で済むというものだ。「数年我慢すればいい」そう思ったフェルディナンドは、計画を実行に移す。果たして、計画はうまくいくのだろうか。
冷静に考えれば、フェルディナンドの計画を助けた法律は、なんとも男性偏重で封建的なもの。作品中でも同じような”名誉の殺人”を犯した女性は懲役8年を言い渡されている。だが、そんな不公平感を差し引いても、最後の最後まで苦笑いの絶えないストーリー。フェルディナンドが殺害の実行を思い浮かべるシーン、計画の実行のためこまごまと準備するシーン、父親と交代でアンジェラの部屋を覗く様子や、噂話がすぐに広がっていく様子と、誉められた行動ではないが人間味溢れる描写だ。
狡猾ながらも少々情けないフェルディナンドをマストロヤンニが好演。アンジェラを演じるサンドレッリも小悪魔的なところを見せて魅力的。
イタリアで離婚法が成立したのは1970年。それでも、実際に離婚するにはいくつもの手続きが必要だ。また、カトリックでは離婚というものが認められないため離婚ではなく「結婚手続きが無効だった」という処理をするのだとも聞く。なんでも、その結婚無効証明の発行がヴァチカンの主要業務のひとつになっているらしい。
作品中、人気の映画がシチリアでも上映されると家族で見に行くシーンがある。その映画はマストロヤンニの出世作「甘い生活」。
ロケ地 / シチリア
製作 / 1961 イタリア
監督 / ピエトロ・ジェルミ
キャスト /
ロザリア … ダニエラ・ロッカ
アンジェラ … ステファニア・サンドレッリ
イタリア旅行 / Viaggio in Italia
1950年代、ナポリ、カプリ島、ポンペイ。倦怠期を向かえた夫婦がイタリア旅行を通して、お互いの存在の大切さを再認識する。
キャサリンとアレックスは、結婚8年目、別荘を処分する目的で訪れたイタリア旅行が、新婚旅行以来の二人きりの旅行であった。旅行を続けるうちに二人の心はすれ違い、ついに離婚ということばがアレックスの口から出てしまう。
お互いに相手のことが気にかかるのに、その気持ちを素直に表現するほど若くはなくなってしまった。妻は夫がパーティーで知り合った美しい女性に惹かれているのではないかと気になり、また夫は妻がかつて妻のことを愛していた男の想い出の場所へ出かけていくのが気にくわない。小さなすれ違いから、日々別の行動をとるようになり、二人のすれ違いはさらに大きなものとなっていく。その二人を変えるきっかけは、ポンペイの遺跡の中で抱き合ったまま発見された男女。日常の、どんな夫婦にもありがちなできごとを描きながら、ストーリーは進む。ひとつひとつの小さな歪みが、積み重なると大きな歪みとなること、知っていながら、普段は気づかずにいること。
ラスト、お互いの存在の大切さに気づくシーンは、それまでの物語の積み重ねからすると、あっけない気がする。バーグマンの横顔の美しさだけでも見る価値は十分あるのだけれど。
キャサリンがスパゲッティを食べるシーン、彼女はフォークにスパゲッティをひっかけるだけで、巻かずに口元へ運ぶ。当時でも、スパゲッティはそれほどポピュラーな料理ではなかったのだろうか?外国人であることを強調するための演出か?
ゴダールはこの映画を観て、「男と女とクルマが1台あれば映画は撮れることがわかった」と言い、「勝手にしやがれ」を撮ったのだという話もある。
ロケ地 / ナポリ、カプリ島、ポンペイ
エクセルシオールホテル … ふたりが滞在するホテル
ラ・ベルサリエーラ … 食事をするレストラン
国立考古学博物館、クーマの遺跡・シビッラの洞窟、ヴェスビオ火山、フォンタネッレのカタコンベ … キャサリンが観光で訪れる場所。国立考古学博物館では「ファルネーゼの牡牛」をはじめとする彫刻を鑑賞する。
カプリ島 … アレックスが訪れる島
ポンペイ … 遺跡を見学する
製作 / 1953 イタリア・フランス [英語作品]
監督 / ロベルト・ロッセリーニ
キャスト /
アレックス … ジョージ・サンダース
いつか来た道 / Cosi ridevano
1958-64年、トリノ。シチリアからトリノへ出てきた兄弟の絆。兄弟の変化と高度経済成長期を迎えたイタリア社会の変化を、それぞれの年の1日を切り取ることで描く。
[到着]1958/1/20。トリノで学生生活を送るピエトロをシチリアから兄・ジョヴァンニが訪ねてくる。学校へ行かせてもらっていることは感謝しているピエトロだが、無学な兄を恥じてもいた。
[嘘]1959/2/7。ピエトロを学校に行かせる為には、どんな仕事も厭わないジョヴァンニ。その兄の強い愛情を重荷に思うピエトロ。
[金]1960/10/10。ピエトロに何不自由ない生活をさせるために働くジョヴァンニ。ピエトロはそんな兄に何かをしてやりたいと思うのだが、空回りしてしまう。
[手紙]1961/4/7。ピエトロがジョヴァンニの前から消えた。ジョヴァンニはピエトロを待ち続ける。
[血]1962/6/29。ピエトロが教師の試験に合格する。ジョヴァンニと喜び合うのもつかの間、ある事件が起こる。
[家族]1964/7/5。北部の女性と結婚し、幸せに暮らすジョヴァンニは復活祭にピエトロを招く。だが、ピエトロは虚ろな表情をしていた。
6年のそれぞれの年の1日を切り取り、兄弟と時代の変化を見せるという手法がおもしろい。各々のストーリーは連続しているわけではないのだが、違和感は感じない。むしろ過剰な説明を排除したことで、描かれない部分への想像が膨らむ。
ストーリーを通して描かれるのは、兄弟の強い絆。強さゆえに生じてしまうひずみ。そして、そのひずみこそが、シチリアの”血”そして”家族”の証であるということ。
兄弟は互いを思っているのにもかかわらず、その愛情の表現が不器用で相手に重荷と感じさせてしまったり、また、求めてもいないものを与えようと躍起になったりする。受け取る側もまた不器用で、お互いの気持ちがかみ合わず、空回りする。はがゆいほどに。そして、血のつながりが、何においても優先されるものとなってしまったとき、兄・ジョヴァンニの思惑は、ピエトロを押しつぶすことになる。最後のピエトロの虚ろな表情は何にもましてずっしりとくる。そしてその表情を見ていると、兄が与えつづけてきたものは愛情などではない、兄は弟を利用していたのではないかと思ってしまう。学校へ通わせたのも、不自由ない生活をさせたのも「先行投資」ではなかったのかと。彼らの人生を狂わせたものは運命のいたずらなのかもしれない。だが、その引き金となったものはジョヴァンニの”思惑”だったのではないだろうか。(監督のことばによればそうではないらしいのだが)
原題のCosi Ridevanoとは「私たちの笑い方」といったような意味。「La Domenica del Corriere」という雑誌の昔のジョークを投稿するコーナーのタイトルだそうだ。現代の視点から過去を描くこの作品に監督はこのことばを選んだ。
雨に滲むトリノの街が美しい。舞台となったトリノは、イタリア有数の自動車メーカー、フィアット社のお膝元。南部から来た男にピエトロは「フィアットで働いているのか?」と聞かれるが、おそらく、この男にとってトリノ=フィアットというぐらい強いイメージを持っていたのだろう。
対して、兄弟の出身地であるシチリアをはじめとする南部の都市は、貧しい都市も多く、南北格差は今もってイタリア現代社会の抱える重要な問題のひとつである。イタリアはどこも郷土意識が強いものだが、おそらく半島と島という違いからシチリアのそれはさらに強いものではないかと想像させる。
[到着]の章と[家族]の章で繰り返されるなぞなぞ。正確なところはわからないが、「分不相応なものを求めても、実現は難しい。たとえ、それを手に入れることができたとしても、どこかに無理がかかり、すぐに破綻してしまうだろう」という暗喩に聞こえてしまう。まるで兄弟の現状を見透かしたような。さて、この問いの本当の答えは何なのだろうか?
クロスワードの答えとしてアリダ・ヴァッリの名前が出てくる。「第三の男」「夏の嵐」などで知られるイタリアの名女優のひとりである。
ロケ地 / トリノ、クネオ
トリノ
ポルタ・ヌオーヴァ駅
ローマ通り … 柱廊式アーケードがあるトリノのメインストリート
サン・カルロ広場
モーレ・アントネッリアーナの塔 … 「あれがミラノのドゥオーモだ」と見上げる建物。数年前に映画博物館となり、一般公開されている。
クネオ … トリノから列車で2時間ほどの緑の農業地帯に囲まれた都市。[家族]の章の撮影に使用したのではないかと思われる。
製作 / 1998 イタリア
監督 / ジャンニ・アメリオ
キャスト /
ピエトロ … フランチェスコ・ジュフリッダ
ハウスキーパーさんがキッチンの整理と書斎の本棚をきれいにしてくれました。雑誌やらビン類などあちらこちらにある日があります。記憶にないのですが。今日の映画の友料理はオイルサーディンのパスタに牛タンシチューです。よく煮込んであるとぜいたくな気持ちになります。