家事をキーパーに任せてイタリア映画とワインで休日を Cinema Italiano
愛の嵐 / The night porter
1957年、ウイーン。偶然再会した男女の過去。過去を引きずる現在。その破滅的な愛。
ウィーンのホテルで働くマックスは、客の中に見覚えのある女性を見つけ恐怖する。彼女は今でこそ指揮者の妻に収まっているが、彼がナチの親衛隊にいたころユダヤ人の強制収容所で、異常な性欲のはけ口としていたぶっていたルチアであった。ナチと関連があった人への追求が進む中、素性を隠して働くマックスにとって彼女は、現在の自分の暮らしを続けるのに邪魔な存在である。彼女もまた、過去の体験に恐怖し、一度はウイーンから逃げ出そうとする。だが、顔を合わせた二人は揉み合ううちに、いつしか互いの体を求め合うのだった。
ルチアはマックスとの関係ゆえに、生き延びることができた。それは彼女にとって、大きな意味をもつことだろうが、はたしてこのような関係を持った相手に再会した時、愛情を感じるようなことがあるのだろうか? 追いつめられた境遇から相手にすがったのか、純粋に性行為の相手として体が彼を求めたのか。そして体の結びつきが、心をも結びつけたのか。
私にはルチアの心情は理解し難い。ルチアの心理描写が希薄に感じられるからかもしれない。女性の監督の作品であるが、どうも男性の視点で描かれているような気がしてならない。
戦後にまで及んだナチの影響力。ナチスの狂気に翻弄された男女の愛の結末は悲しいものであった。
ロケ地 / ローマ、ウイーン
ローマ・日本大使館1階ロビー部分 … ルチアがダンスを強要される強制収容所のシーン。
電話ボックスのガラスに映りこむ聖ステファノ大聖堂、車のボンネットに映る二人の男。細やかな映像にも注目したい。
製作 / 1974 イタリア [英語作品]
監督 / リリアーナ・カヴァーニ
キャスト /
マックス … ダーク・ボガード
赤い影 / Don't look now
1970年代、ヴェネツィア。事故で娘を亡くした夫婦が、知り合った霊能力者。霊能力者を信じる妻と信じない夫が体験するサスペンス。
イギリスの修復士ジョンは教会の修復作業のため妻・ローラと共にヴェネツィアに滞在していた。夫婦はレストランで盲目の霊能力者・ヘザーから事故で亡くした娘の霊の存在を聞かされる。それが原因でヘザーのことばを盲信するローラ。ジョンはローラをふたりから引き離そうとするが、そんなジョンが見たものは、赤いレインコートを着た娘の幻影だった。
ローラの精神状態を気遣っていたはずのジョン。だが、気づかぬうちに彼自身が心の均衡を失っていく。正しいと信じていたものは幻影かもしれないし、戯言と思っていたものは真実かもしれない。疑い出せば精神は平衡感覚を失い、自覚せぬうちに大きく傾き、迷宮に囚われてしまう。そんな怖さが薄暗いトーンとヴェネツィアの魔性のなかで肥大していく。
この作品の趣旨とはまったく違うのだろうが、妄信的に宗教にのめり込んでいく人というのは、ローラのような体験をした人なのかもしれないなどと考えた。
ときおりクローズアップされる画面中の赤いもの。おそらく、それぞれに意味はないのだろうが、少女の着ていた赤いレインコートを想起させる。ジョンの頭の片隅に常にレインコートの赤が存在するかのように。
ジョンの宿泊していたホテルでは、「休業期間に入るので、表に札を出しておくように」というような会話が交わされる。ヴェネツィアのような観光地ではシーズン・オフには営業しないホテルも少なくない。
ロケ地 / ヴェネツィア
スカルツィ橋 … レストランで倒れたローラを救急車(船)に乗せるシーン。背景に写るのはカナル・グランデとスカルツィ橋ではないかと思われる。
スキアヴォーニ通り … ホテルから空港へ向かうローラを見送るシーン。
ジョンが修復に携わっている教会は「サン・ニコラ」と呼ばれているが、どこの教会だろう?
ジョンとローラが滞在するホテルは「ホテル・ヨーロッパ」と呼ばれている。「Europe & Regina」のことだろうか。
製作 / 1973 イギリス・イタリア[英語作品(イタリア語部分あり)]
監督 / ニコラス・ローグ
キャスト /
ローラ … ジュリー・クリスティ
ヘザー … ヒラリー・メイソン
ウェンディ(ヘザーの姉) … クレリア・マタニア
赤いアモーレ / Non ti muovere
1990年代、ローマ。不幸な結果に終わってしまった女性との関係を回想するストーリー。
外科医であるティモーテオが勤務する病院に、交通事故に遭った自分の娘が運び込まれてきた。娘が生死の境をさまよっているときに、ティモーテオは娘の誕生と前後して関係を持った女性、イタリアのことを思い出していた。
妻・エルサが妊娠した頃、同じように妊娠していたイタリア。そして、エルサが出産した直後にイタリアとの関係は終わってしまった。イタリアを不幸な目に合わせてしまったのは自分が原因であると、ティモーテオは自分を責め、彼女の幻影に許しを請う。イタリアとの関係が終わったときに、それ以上彼女を苦しめることもなくなっていたはずなのだが、自分の娘を見るたびにイタリアとのことを思い出さずにはいられなかったのだろう。イタリアとイタリアが産むはずだったこどもへの愛情を、 自分の娘に押し付けてきたのかもしれない。そしてティモーテオは、15年間、イタリアに許しを請い続けていたのだ。
だがイタリアが実際にティモーテオを責めたわけでも、恨みごとを言ったわけでもない。ティモーテオを許せなかったのは、 実はイタリアではなく彼自身なのではないか。
娘が生死の境をさまよったとき、ティモーテオは心の底から「逝かないで」と叫ぶ。そのとき初めて、娘に対する愛情とイタリアに対する愛情とを、分かつことができたように見える。
衝動から始まった関係であり、社会的に妻・エルサを優先していたので、イタリアに対して後ろめたさを感じていたが、イタリアに対する愛情も偽りではなかったのだと自身が認識することで、彼は自分を許すことができたのだと思う。そして、イタリアの幻影は消えた。 とはいえ、観終わった後に、どんよりとした重さの残るストーリーである。
娘の手術を外で待つ間の回想は、まるでティモーテオの告解を聴かされているようにさえ思う。 交差する通路の真ん中にイスを置き、座っているイタリアの姿は、ティモーテオの心情の投影でもある。ティモーテオという男の弱さと、イタリアという女の強さ。実際の力や立場の強弱とは違う、強さ・弱さが映し出されているところにも注目したい。
以前に女優として活動していたという原作者のマルガレート・マッツァンティーニがラスト直前にカメオ出演している。 ちなみに、マッツァンティーニは監督・主演のカステリットの妻でもある。
イタリアとティモーテオが出会った郊外のバール。男たちがサッカーゲームに高じている風景がイタリアらしい。
レストランのシーンと、イタリアの手術後のシーンで見える緑のボトルはサン・ペレグリノ。日本でもよく見かけるようになったイタリア産のミネラル・ウォーターである。イタリアで見かけるミネラル・ウォーターは、たいていどのブランドの水でも炭酸入り/炭酸なしがあるのだが、イタリア人は炭酸入りを好んで飲むようである。
ロケ地 / ローマ、Bojano(カンポバッソ、モリーゼ州)
ローマ
Ospedale Militare di Roma Celio … 病院のシーン
Bojano
Pleiadi's Hotel
製作 / 2004 イタリア
監督 / セルジオ・カステリット
キャスト /
イタリア … ペネロペ・クルス
エルサ…クラウディア・ジェリーニ
原作 / マルガレート・マッツァンティーニ『動かないで』 草思社 泉 典子【訳】
Don't Move(英語版) Non ti muovere(イタリア語版)
ハウスキーパーさんもいつもよりはりきってます。アイロンをかけながら鼻歌を歌っています。今日はタラのローズマリーソテーです。アサツキのスープクッパはとてもおいしいです。めずらしくチリの白を飲みました。