家事をキーパーに任せてイタリア映画とワインで休日を Cinema Italiano
イノセント / L'Innocente
20世紀初め、ローマ。愛人に夢中で妻を顧みなかったトゥリオの、妻の不倫をきっかけとする苦悩。
貴族のトゥリオは、愛人テレーザに夢中で、従順な妻、ジュリアーナのことなど相手にしないばかりか、浮気を容認してくれるように説き伏せる始末。ところが、妻の不倫に気づき、彼女が別の男の子どもを産んだことで苦悩する。
不倫に気づいてから再燃する妻への愛。それは、おだやかなものではなく、優しいものでもない。嫉妬心から生み出される激しい、その愛は、独占欲の現われである。愛情と独占欲は、時として、同じ顔をして、その姿を現わす。だが、それは似ても似つかないものだと当人は気づかない。「愛」のためと信じてとった行動が、妻の心を深く傷つけていたことを。そして、すべてを失うことになるのだと。
ヴィスコンティの遺作となったこの作品は、70歳の監督の作品とは思えないほど、官能的。また、貴族の生活を映し出す美しい映像は、自身が貴族の出身であるヴィスコンティにしか、表現し得ないものだろう。
トゥリオの妻ジュリアーナは、それが不義の結果と知りながら、堕胎を拒否する。堕胎であれ、自殺であれ、神から授かった命を人間の手で終わらせることは、カトリックの教義に反することで、殺人と同様の罪となるからだ。
「地上のことは地上で決着をつけたい」と無神論者のトゥリオは言うが、カトリックの教義を建前とする妻の本音を、肌で感じていたのかもしれない。
ロケ地 / ローマ、ルッカ
コロンナ宮 … 公爵夫人の音楽会のシーン等
トゥリオの実家・別荘はルッカのvillaを使用して撮影。(詳細は未確認)
製作 / 1975 イタリア
監督 / ルキノ・ヴィスコンティ
キャスト /
ジュリアーナ … ラウラ・アントネッリ
テレーザ … ジェニファー・オニール
原作 / ガブリエレ・ダヌンツィオ 「罪なき者」
イル・ポスティーノ / Il Postino
1950年代、 イタリア。 本国チリから思想的な理由でイタリア、ナポリ沖のプローチダ島へ亡命してきた有名な詩人、パブロ・ネルーダ。彼と彼専属の郵便配達夫となったマリオ。
漁師の仕事に嫌気がさし、不平をもらす毎日から、郵便配達の仕事を得たことをきっかけにマリオの毎日は少しずつ変わっていく。目の前のことに積極的に動くようになる。一目惚れした女性の気をひくために、詩を贈る。共産党の活動に参加する … …。
ひとつの出会いがマリオの人生を変えてしまう。 それが良かったのか、良くなかったのか。彼にとっては? 彼の家族にとっては?島の風景と、マリオの純粋さに惹きつけられる。
マリオを演じたマッシモ・トロイージ。心臓を患っていたにもかかわらず、自分の手術より撮影を優先させ、撮影終了翌日に急逝したという。スクリーンのマリオと、現実のトロイージが重なる。
ロケ地 / プローチダ島(ナポリ沖)、サリーナ島 (シチリア近海・エオリエ諸島)
コリチェ-ラ村(プローチダ島) … 漁村。海岸沿いにバールとして使用された建物(実際は小型船舶の修理工場)がある。
サリーナ島 … ネルーダの暮らす家はサリーナ島でのロケ。
なお、原作では舞台はチリの島である。
製作 / 1995 イタリア
監督 / マイケル・ラドフォード
キャスト /
ネルーダ … フィリップ・ノワレ
ベアトリーチェ … マリア・グラツィア・クチノッタ
原作 / アントニオ・スカルメタ 『イル・ポスティーノ』 徳間文庫 鈴木 玲子【訳】
海の上のピアニスト / The Legend of 1900
1900年、アメリカ-ヨーロッパを結ぶ大型客船「ヴァージニアン号」。一度もその船から降りることがなかった天才ピアニストの生涯。物語は、そのピアニストと一緒にバンドとしてプレイした仲間、トランペットのマックスの目を通して語られる。
1900年を迎えた日、客船「ヴァージニアン号」の船員が船内のホールで生み捨てられている赤ん坊を拾う。その年にちなんで”1900(ナインティーン・ハンドレッド)”と名づけられた赤ん坊は、成長しピアニストとして頭角を現すようになる。彼が他のピアニストと違っていた点は、育ての親が彼を手放す羽目になるのを怖れて、彼をどこにも上陸させることなく、船内で育てたこと。それゆえ、どこの国の記録にも彼の名前はなかった。彼が存在しているという事実がどこにも記録されていなかったのである。そして彼は成長後も、自分の意志で船内に留まり続けた。
ファンタジー、である。記録はなく記憶の中にしか残っていない男、1900。
一枚のレコードをきっかけに、かつてのバンド仲間だったマックスが1900について語り出す。その話は俄かには信じがたいのだが、ひきつけられる話である。1900の虚ろな目は、現実に存在している男のものなのか、ファンタジーの世界に生きる男のものなのか。その目がかえってこのストーリーにリアルさを出しているようだ。
彼は幾度となく、地上で演奏することを勧められ、また、自分でも未知の世界である陸地へ降りようとする。一度でも、経験してしまえばなんでもないことなのだとわかっていても、その最初の一回を躊躇してしまう気持ち。最初の一回をやめてしまったが為に、もう一度という気持ちにならない心境。たとえ、誰かが背中を押してくれたとしても、一歩踏み出すことすらできなくなってしまう、その気持ちは1900に限ったことではなく、日常誰もが経験したことがあるはずの気持ちである。そして、彼は消極的な理由から、船に留まり続けるのである。マックスが語る1900のエピソードは印象的。中でも、1900とマックスの出会い、踊るように床を滑るピアノを演奏する1900、そして、ピアニスト対決のシーンの描き方は鮮やか。
特殊な設定であるし、話の展開も想像できてしまうのだが、それでもなおドラマチックなストーリーと美しい映像と音楽は鑑賞に値する。ただ、トルナトーレの作品ということで、イタリア色の強いもの、深みのあるストーリーを期待される向きには物足りないかもしれない。
「おんがく」という日本語をつぶやく東洋系の女性。トルナトーレはどいういうつもりで、この女性に日本語をつぶやかせたのか。日本の観客への”ご挨拶”か?その真意はわからない。
原作はひとり芝居のための戯曲ということで、舞台は本作品とは、かなり趣きが違うものなのだろう。機会があればぜひ見てみたいと思う。なお、作中登場するジャズピアニスト、ジェリー・ロール・モートンは実在の人物である。
籠の中の鳥は、外へ出られないのではなく、自らの意志で中へ留まっているのかもしれない。そんなことを考えた。
ロケ地 / ウクライナ
ストーリーのほとんどは船上。船はウクライナのオデッサにあった元貨物船を使用。その他、ローマでのセットによる撮影。
製作 / 1999 イタリア・アメリカ
監督 / ジュゼッペ・トルナトーレ
音楽・ピアノ演奏 / エンニオ・モリコーネ
キャスト /
マックス … ブルース・テイラー・ヴィンス
楽器店主 … ピーター・ヴォーン
原作 / アレッサンドロ・バリッコ 『海の上のピアニスト』 白水社 草皆伸子【訳】
ハウスキーパーさんはソファーのダニが気になるというのですが、仕方ないと思いつつ布はやめようか迷ってます。最近米類が食べたくなったので映画の友料理は生ハムの炊き込みピラフとスペインオムレツ、肉じゃがポテトサラダにしてみました。