家事をキーパーに任せてイタリア映画とワインで休日を Cinema Italiano
黒い瞳 / Oci ciornie
1970年代、ローマ、モンテカティーニ、レニングラード(現在のサンクトペテルブルグ)
ギリシャからイタリアへ向かう船の中のレストランで話は始まる。偶然知り合ったロシア人にロマーノは過ぎた日の思い出を語り始める。大学時代に知り合った銀行家令嬢と結婚し、「逆玉」にのったロマーノ。年を重ねるにしたがって、自分の居場所がなくなっているのを感じ、ある年、ふらっと温泉地モンテカティーニへやってきた。そこで出会ったロシア人女性に恋をし、彼女を追いかけてレニングラードへ。その後のストーリー展開は先が見えてしまうありきたりなもの。
欲しいと思っていたものが、手に入ってしまうと、いや、手に入れられるとわかった時から、それは徐々に魅力を失ってしまうのかもしれない。少なくともロマーノにとっては、その程度の恋だったのだろう(男性に都合がよくできた話なのだが)。恋が愛に変わるには、片方だけがいくら思いをつのらせても、どうなるものでもない。
テルメ:イタリアの温泉。 日本の温泉のように入浴するものと、鉱泉を飲むものとがあり、舞台となったモンテカティーニは後者。飲泉場があり、のんびりと読書をしたり、音楽をきいたりしながら、温泉を飲むのである。入浴するものも、お風呂というよりは、プールという感じである。
映画では、泥(と思われる)の温泉のプールも出てくる。 そのプールに落ちてしまった彼女の帽子を拾うため、真っ白なスーツが汚れるのも構わず、プールに入り帽子を拾うロマーノ。ついでに、プールに浮かべてあった花も一緒に持ってきて渡すところなど、いかにもイタリア男っていう感じだ。
◎ロケ地 / ローマ、モンテカティーニ、レニングラード
モンテカティーニはフィレンツェから1時間ほどの温泉の街。肝臓・胃腸・リューマチに効く温泉として、世界中のお金持ちから愛されてきた高級リゾート。
製作 / 1987 イタリア
監督 / ニキータ・ミハルコフ
キャスト /
アンナ … エレナ・ソフォーノワ
エリーザ … シルヴァーナ・マンガノ
原作 / 「犬を連れた奥さん」 … チェーホフ 『かわいい女,犬を連れた奥さん』
新潮文庫 小笠原 豊樹【訳】
月曜日に乾杯! / Lundi matin
2000年代、フランス、ヴェネツィア。ふとしたことから、平凡な毎日から抜け出したヴァンサン。フランス郊外の村から、世界の観光地ヴェネツィアへ。新鮮な体験をするのもつかの間、ヴェネツィアにはヴェネツィアの日常があることに気づく。
平凡で退屈な一日は、前の日と寸分違わぬ繰り返し。朝脱いだ靴は、帰ってくるまでそのままの場所にある。でも、その繰り返しをやめたくなったら?変えることができると気づいたら? 朝出かけたきり帰らなければ、靴は?
日常から非日常への逃避/脱出というモチーフはありふれたものだけれど、特徴的なのは、”力の抜け具合”。繰り返される毎日に嫌気が差してはいても、それが爆発した結果の行動でもなければ、脱出のために準備を続けていたわけでもない。今の生活から抜け出したら、やりたい何かがあるわけでもない。妻にうんざりしてはいても、他の女性に目移りしたわけではない。ヴァンサンを突き動かす積極的な動機はなく、彼はただふらっと、なんとなく、日常から抜け出していくのだ。
日常から抜け出したという点では、(そして行き先も)「ベニスで恋して」と同じだけれど、ドラマチックな展開など全然なく、小さな笑いと、小さな発見とを積み重ねて淡々とすすむストーリー。いろいろなモチーフを繰り返し使うことで、おかしさ、変化のない日常、異なるものの同一性をさりげなくみせてしまうのは、うまい。
ピッタリの俳優が見つからず、監督自らが演じたというヴェネツィアの侯爵には、大笑い。
ヴァンサンの息子が教会で描いているのは「聖ゲオルギウスの竜退治」。聖ゲオルギウス(=サン・ジョルジョ)はヴェネツィアの守護聖人のひとりでもあるそうだ。
話題の超大作によくある”どうだ、スゴイだろう”的な部分が少しもなく、観る側も力を抜いてのんびりと観られるような肩に力の入ってない作品。
◎ロケ地 / ヴェネツィア、フランス
製作 / 2002 フランス・ イタリア
監督 / オタール・イオセリアーニ
キャスト /
トイレ番 … マニュ・ド・ショヴィニ ……本作品の美術監督でもある
マルティーノ侯爵 … オタール・イオセリアーニ
建築家の腹 / The Belly of an Architect
1980年代、ローマ、ヴェンティミリア、ティヴォリ。建築家ブーレの展覧会の準備のためローマを訪れたアメリカ人建築家クラクライト。彼を巡る生と死。
実際に建築されたものがないという伝説の建築家・ブーレの展覧会を開催するために、クラクライトは妻・ ルイザとともにローマへ赴く。準備が始まるとほどなく、腹痛に襲われたクラクライト。アウグストス帝の死因、妻が妊娠したこと、そして彼女が浮気していることを知った彼は、”生”へ執着するかのように、”腹”への執着を見せるのだった。
拡大コピーを繰り返すように、自分自身で不安を増幅していき、ついにはその大きさ/重さに持ちこたえられなくなってしまう。普通であれば妻や友人が打ち消してくれるであろうその不安を、吐き出すことができずに追いつめられていく建築家が哀れである。
クラクライトに死の不安を抱かせるのも”腹”であれば、ルイザが新しい生を宿すのも”腹”。新しい生命が誕生した時に、命を絶つ者。死を予感させる建築物-アウグストス帝廟、墓所としてのパンテオン、ブーレのデザインによるニュートン記念堂、無名戦士の墓があるヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂。パズルのような符合もグリーナウェイならでは。
建築がテーマのひとつであるこの作品は、ローマの新旧の建築物に着目して鑑賞するのもおもしろい。
エチエンヌ・ルイ・ブーレはフランス革命期に実在した建築家。理論や構想を描いたドローイングでその名を知られているようだが、彼の設計により建てられた建築物はないとのこと。
ロケ地 / ローマ、ヴェンティミリア、ティヴォリ
ヴェンティミリア : 寝台車でフランスからの国境を越える
ローマ
ポポロ広場 … タイトルバック
パンテオン、ロトンダ広場 … クラクライト歓迎のパーティー、酔ったクラクライトが食事をする客にからむシーン
ヴィットリオ・エマヌエーレ2世記念堂 … 昼食会の場所[記念堂のテラスからコロッセオ、サン・ピエトロ大聖堂、サンタニェーゼ・イン・アゴーネ教会(ナヴォナ広場)を臨む]。
ブーレの展覧会の会場
アウグストス帝廟
サン・ピエトロ広場 … クラクライトがハガキを投函する
フォロ・ロマーノ
ナヴォナ広場 … 彫刻の「腹」の写真を撮るシーン
EUR、労働文明宮
カピトリーノ美術館 … クラクライトが取り調べを受けるシーン(実際には大きな「腹」の彫刻はない)
ティヴォリ
ハドリアヌス帝の別荘 … ルイザとカスペジアンが訪れる場所
製作 / 1987 イギリス [英語作品]
監督 / ピーター・グリーナウェイ
キャスト /
ルイザ … クロエ・ウェッブ
カスペジアン(ルイザの浮気の相手) … ランベール・ウィルソン
また、切れてしまいます。